「自分」を作っているものを解く  II 自分の人生も決めている

目 次

II 自分の人生も決めている

執着や思い込み、固定観念があることによって苦しみが生まれますが、それはまた自分の人生を決めているものでもあります。
3つ例をあげてお話いたします。

1. 幸せになってはいけないという思い込み

過去世で、国に内戦が起きたときに自分の家族が全員殺されてしまい、自分だけが生き残ったという体験をした女性がいたとします。そのときその女性は、深い悲しみと恐怖心とともに、

「家族はこんなに辛い思いをしたのだから、自分だけが幸せになることはできない。幸せになってはいけない」

と強く思い込んでしまったとします。
そうすると、その女性の心は自分の幸せを選択しない、選択できないようになります。
その体験をした時代から生まれ変わって、体験をしたときの記憶がなくなっていても、「幸せになってはいけない」という思いはそのまま残っているため、幸せではない人生を自ら選択してしまいます。
その選択は、自分の中から「幸せになってはいけない」という思い込みがなくなるまでつづきます。

さらに、その体験をしたときに恐怖心や悲しみの感情に強く執われたとすると、生まれ変わってもその執われを持ちつづけているために、愛する家族と死別するなどの同じような現実が起きることになります。

そして、自分で「幸せになってはいけない」と思い込んでその思いを持っていながら、生まれ変わって過去の体験を忘れてしまっている自分は、現在の幸せでない生活を「どうしてわたしはこんなに辛く大変なことばかりなのだろう」と嘆き苦しむことがあります。

そうすると今度は「幸せになりたい」と幸せを求めるようになり、「幸せになってはいけない」という思いを持っていながら「幸せになりたい」と求めることで心に矛盾と葛藤が生じて、さらに苦しむことになります。

家族が亡くなったのだから悲しむべきだろう、自分は幸せになるべきではないだろうという思い込みを持ったために、この女性は幸せでない人生を自分で決めてしまいました。

2. 心に深く残った思い

役職についていたAさんは、仕事上で進むか退くかの判断で進むことを選択したとき、部下から「あなたは間違っている」と激しく責め立てられました。進んだ結果、多方面に損害を与えることになってしまいました。自分が選択したことについては様々な事情から進むしかなかったし、部下はその事情を知らずにいっていることだと思っていましたが、部下からいわれた言葉が強く心に突き刺さって離れず、その思いに執われました。

「あなたは間違っている」という言葉が心に刺さったAさんは、自分に自信がなくなりました。
生まれ変わっても、その思いを持っているAさんは、仕事に対して「ああなったらどうしよう、こうなるかもしれない」といつも不安感があり自信が持てませんでした。能力があるために周りから引き立てられることが多く、仕事はきちんとこなしていましたが、「自信がない」ため、大きな仕事を任されそうになると、敬遠したり辞退したりしてしまいました。

Aさんは、「自信がないことを克服するために、もっと勉強をして知識をたくさん身につけよう」、「不安でも頑張って先に進まなければ」と考えましたが、知識を身につけるという、自分の外の世界に解決策を求めたり、精神力で頑張ろうとしても、自分の内に「自信がない」という執われがあるうちは、「自信がない自分」はなくなりません。

人から「あなたは間違っている」といわれたことに執われたAさんは、その執われが自分から消えてなくなるまで、仕事に対して「自信がない」という思いをつねに持ちつづけることになります。

3. 自分を罰する思い

Bさんは、友人のCさんに対して侮辱するような酷いことをいってしまい、Cさんから離れていきました。Cさんはそのことについてそれほど気にしていなかったのですが、Bさんは「Cさんを傷つけるような酷いことをいって、わたしは悪いことをしてしまった。わたしのことを許してくれないだろう」と、心に強く残って罪悪感を持ちつづけました。

持ちつづけた罪悪感は執着になり、友人に悪いことをしてしまった人間だから「自分は罰を受けなければいけない、悪いことをした代償に苦しまなければいけない」と思ってしまいました。友人を苦しめた自分は、楽しそうに幸せそうにしている資格がないと思いました。

そうした罪悪感を持った心は、物事がうまくいかなくて苦しむような方向を選択して自らに罰を与えたり、楽しい、嬉しいという気持ちが動かない暗く沈んだ心のままになったりします。

友人に少し酷いことをいったくらいの「そんな些細なことで ?」と思うかもしれませんが、執着とはそのようなもので、自分で執着していたものがわかってみると、本当に些細なことに対しても執着していることがあるし、執着していたことで自分がそれ以外の選択をできなかったり、執着していたことが自分の性格や考え方、価値観を決めていたのだということが理解できるようになります。

繰り返す現実

同じような体験をしたとしても、執着をする人もいればしない人もいます。執着をする事柄も人によって違います。物事の捉え方の違いであったり、自分がどういうことに感じやすいか、こだわりやすいか、強く反応しやすいかによります。

過去生で出来事が起きたときにその出来事に執着して、その執着を持ちつづけていると、生まれ変わっても過去世と同じような出来事が自分に起きます。執着したものを持っている限り、それが解けてなくならない限り、執着したときと同じような現実が繰り返し起きます。そして、そのときに執着した苦しい思いと同じ苦しみを感じることになります。

職場を変えたり引越しをしたりしても、同じような人と出会ってしまうということはないでしょうか。
職場の社長や社員にいつも叱責されたり悪口をいわれて、職場に行くのが辛いので転職をした。けれど転職先でも前の会社の社長や社員と似たような人がいて、また同じような辛い思いをしている。
隣の家とトラブルがあったので引っ越しをした。けれど新しい家でもまた同じようなトラブルが起きてしまった。

というように、今の状況が辛かったり嫌だからと逃げても、その先でまた同じような人と出会ったり、同じような状況になってしまうことがあります。起きていることに対し執着しているものを持っている限り同じ現象が起きます。執着しているものがなくなることで、状況が変わります。

このように、執着や思い込み、固定観念によって自分の人生を選択して決めています。偶然であったり誰かのせいではなく、また自分に頑張りや努力が足りなかったからではなく、自分と自分の周りに起きていることはどんな些細なことでも、自分の執着や思い込み、固定観念によって自分が選択している結果なのです。
すべては自分の心が作り出していることなのです。

「Ⅲ 執着しているものに気がつく」



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